目覚めた瞬間から始まる1日の行動は、夜間の睡眠の質に大きな影響を及ぼします。「睡眠は一日を映す鏡です」と、Ouraのインサイトメッセージチームを率いるJohanna Stillは述べています。
まず朝日を浴び、規則正しい食生活を心がけるなど、日中に9つの習慣を実践することで、深く安らかに眠ることができるようになります。
日中の行動と睡眠の関係を裏付ける科学
体は光や食べ物、ストレス、アクティビティといった内外の刺激に反応しながら、複雑なシステムとして活動しています。これらの刺激はサーカディアンリズムや消化、神経系などの重要なプロセスに影響し、ひいては睡眠にも影響を及ぼします。
「私たちの体には、日中の活動を通じて受け取るシグナルから指示を受ける体内時計があります」とStillは説明します。
シグナルの中には、体に注意喚起して覚醒させようとするものもあれば、休息に向かわせるものもあります。これらのシグナルに従った習慣を取り入れると、睡眠と覚醒のサイクルが整い、睡眠圧(自然な睡眠欲求)が高まります。これで入眠しやすく、また睡眠状態を維持しやすくなります。
Stillは「うまく眠れないと、人はストレスを感じますが、無理に眠ることはできません。実際、このようなプレッシャーがかかると、かえって眠りが浅くなることがあります」と説明します。
無理に眠ろうとするのではなく、これらの9つの習慣を含め、日中に自分でコントロールできることに集中して、夕方に自然に眠くなるようにすることが肝要です。
しっかり眠るために日中にできる9つの習慣
1. 長時間座ったままでいない
Ouraのシニア行動科学者であるSofia Strömmer博士は、「ほとんどの人は、デスクワークや会議、ソファなど、座って過ごす時間が長いものです。しかし、一日中座りっぱなしの状態が長く続くと、睡眠に悪影響を及ぼす可能性があります」と指摘します。
座っている時間が長すぎると、体に必要な睡眠圧(体が自然に睡眠しようとする力)がかかりません。日中にアクティビティを盛り込むことで、体の睡眠意欲が高まり、眠りにつきやすくなります。
ある研究のレビューは、活動的な人ほどよく眠れると発表しています。またある調査では、1日に30分以上の運動を心がけた場合に効果が最も高く、調査参加者の入眠が早まり、平均で15分長く眠ることができました。「座りっぱなしの人には大変だと感じるかもしれませんが、1日のうちに10分間の休憩を3回入れると考えればいいのです」とStrömmer博士は話します。
メンバー向けヒント:「不活動アラート」を有効にすると、不活動の時間が50分間続いたときに「足を伸ばしましょう」というリマインダーがそっと表示されます。 |
2. 回復のための休憩を取り入れる
より良い睡眠のためには、一日中活動的に過ごすことが大切ですが、やり過ぎは逆効果です。ストレス反応が常に活性化していると、健康的に睡眠圧を高める能力が妨げられ、休息ではなく燃え尽きた気分になります。
一日中ではなく、短時間の活動やストレス(どちらも短距離走のようなものと考えましょう)の後、回復のための休憩を挟み、均衡を取るようにします。こうして意図的に休憩すると、神経系が整い、ストレス管理の向上につながり、安眠が促されます。
メンバー向けヒント:Ouraアプリで日中のストレスグラフ([回復]にあります)をタップして、修復時間を追跡しましょう。 |
3. 就寝前に脳を穏やかな状態にする
忙しい1日の後、ハードなワークアウトをしたり、または刺激的な映画を観たりしながらくつろぐことがあるかもしれません。こういったアクティビティでストレスは解消されますが、脳への刺激が強すぎて眠れなくなる可能性があります。活性状態の脳は、眠るためにシャットダウンする準備ができていません。
1日の中で、脳を落ち着かせる時間を意図的に取ると、睡眠の質が大きく変わります。ご心配なく。リラックスした状態とは、就寝直前にただ静かに座っていることではありません。Strömmer博士いわく、「心がせわしないと、静かに落ち着くことも、マインドフルネスを実践することさえも本当に難しくなります。」研究によって証明されている、いずれかのくつろぎのルーチンを実践して、日中も夜間も心身がリラックスするようにしましょう。
メンバー向けヒント:Ouraの[探索]コンテンツから、脳をリラックスさせる呼吸エクササイズ、ガイド付き瞑想、睡眠物語を利用してみましょう。 |
4. 寝室を睡眠するだけの場所にする
脳は、それと認識することなく、場所と行動の関連性を形成することが多くあります。たとえば、車内にいると、心は「通勤」モードになります。
同じ原理はベッドにも当てはまります。ベッドで頻繁に仕事をする、テレビを観る、スマートフォンをずっと観ているといったアクティビティを行うと、脳がベッドを休息や睡眠と結びつけにくくなります。
やむを得ず寝室で仕事をする場合は、はっきりと区別するようにしましょう。最低でも一日の仕事が終わったら、ノートパソコンや仕事道具を片付けましょう。夕方に仕事をすると、脳が活性化した状態になり、リラックスして眠りにつくことが妨げられます。
ベッドを睡眠専用(たまに昼寝も)にすることで、ベッドが休息と結びつけられて、夜間に脳がくつろいだ状態になりやすく、より健康的な睡眠サイクルになるようにします。
5. 規則的に食事をする
夜に重い食事をすると、消化器系が活発な状態となり、体温が上昇し、メラトニンの分泌が阻害されて、睡眠の妨げになります。こうした混乱を避けるために、就寝時間の2時間前以前には食事を終えることが理想です。
しかし、夜遅く食事をすることを避けるだけではありません、1日の中で、何をいつ食べるかも睡眠の質に大きく影響します。たとえば、カフェインの効果を上げるために朝食を抜くと、体内時計が狂います。夜間の断食状態の終了の合図として栄養価の高い朝食を摂ると、昼間であることが体に伝わり、サーカディアンリズムの支えになります。
朝食はインスリンの分泌を促進し、肝臓の体内時計をリセットします。多数の研究者が、肝臓は体の総合的なサーカディアンシステムを調整する中心的な役割を担っていると考えています。
食事をするタイミングが睡眠にどのような影響を与えるかについては、クロノタイプ(生まれつき朝型か、夜型か)のような個人的な要因があることを覚えておきましょう。自分に一番合うものを知るために、一定のスケジュールで食事をしてみてください。
詳しく見る:深夜の食事が睡眠に与える影響
メンバー向けヒント:OuraラボのMeals(食事)機能で、食事のパターンが睡眠にどう影響するかご覧ください。この機能は、食事のタイミングと睡眠の質の関係を分析し、休息の効果を見直すことができます。 |
6. 朝、光を浴びる
光を浴びることは、サーカディアンリズムの最も強力な原動力のひとつです。目が覚めたら、できるだけ明るい環境を作ることを目指しましょう。必要であれば、人工照明も使います。外に出て、自然の日光と新鮮な空気を浴びると、さらに効果的です。
朝の光は、体に覚醒する時間であることを知らせ、体内時計をリセットし、コルチゾールの健康的な上昇(コルチゾール覚醒反応)を促進します。この過程により、1日がエネルギッシュに始まり、次に安眠するために必要な睡眠圧が蓄積し始めます。
同様に重要なことは、夜に浴びる光を制限することです。就寝時間が近づいたら、照明を落とし、スクリーンタイムをできるだけ少なくします。メラトニンの生成を抑制する可能性のあるスマートフォンやコンピュータが発するブルーライトには特に注意しましょう。リラックスするためにデバイスの画面を見る必要がある場合は、明るさを落として「ナイトモード」を起動し、脳に「そろそろくつろぎましょう」という合図を送るようにします。
詳しく見る:知っておきたいメラトニンのすべて
7. 難しいことをしてみる
睡眠に悩む人の多くは、エネルギーが抑圧されていると感じており、次から次へと考えが止まらず、落ち着かない状態として現れることがあります。ハードなワークアウト、クロスワードパズル、冷たいシャワーを浴びるなど、少し大変で難しいことをすると、体の適応メカニズムを活性化するストレスを一気にかける「ホルミシス効果を促すストレス要因」として作用します。
このような短時間で一気にかけるストレスにより、コルチゾールとアドレナリンが急増し、交感神経系が活性化されます。しかしこの活性化した状態は、副交感神経反応(休息と消化)により、すぐに打ち消されます。この神経系の変化で過剰になっていたエネルギーが消費され、心身ともに寝る準備ができていると感じるようになります。
詳しく見る:冷静になるために:科学的に裏付けられた全身冷却療法(クライオセラピー)の8つのメリット
8. 正午以降はカフェインの摂取を控える
カフェインの半減期は5~7時間、つまり7時間後、摂取したカフェインの半分が血中に残っていることになります。それほど多くないように聞こえるかもしれませんが、カフェインに敏感な方は睡眠が妨げられる可能性があります。
メンバー向けヒント:「遅い時間帯のカフェイン」のタグを付けたOuraメンバーは、浅い睡眠が平均2%減少しています。このタグを使って、睡眠にどのような影響を与えるか見てみましょう。 |
9. 同じ時間に起床する
夜、眠れないと悩んでいるなら、週末も含めて、朝の目覚ましアラームを厳しく設定する時かもしれません。土曜日に普段より遅くまで寝ると、サーカディアンリズムが変化し、いつもの就寝時間に疲れを感じにくくなります。
この習慣を断ち切るのは難しいですが、一貫していることが重要です。毎日同じ時間に起床すると、体に予測可能なリズムが確立され、自然に入眠、起床しやすくなります。焦らずに対処しましょう。睡眠スケジュールの調整には数日から数週間かかることがあります。それでも、調整する価値はあります。
メンバー向けヒント:睡眠規則性は、コンディションスコアのコントリビューターです。睡眠規則性の傾向グラフをタップすると、睡眠のタイミングのグラフが表示されます。グラフでベッドにいた時間、実際の睡眠時間、夜間の中断による覚醒時間を確認できます。 |
健康的に生活し、よく眠る
睡眠に問題が生じることは、生活の中でよくあることで、誰もが経験するということを思い出すことが重要です。無理に寝ることはできません。1日をできるだけ有効に過ごすことが大切です。座りっぱなしの時間をなくし、休息をとり、規則正しい時間に食事をするようにしましょう。
Still博士の話では、「夕方になる頃までに心拍数が下がり、筋肉がリラックスした状態になっており、心が落ち着いて、眠気を感じることが目標です。つまり、脳は過度に活動しておらず、体は休息する準備ができている状態」です。
Ouraの専門家について
Johanna Stillは、Ouraのインサイトメッセージ部門責任者で、インサイトチームのリーダーです。2017年秋にOuraに入社し、Oura Ring第2世代の立ち上げに携わった後、製品開発担当になりました。オウル大学で情報技術ビジネスの修士号(M.Sc)を取得。Ouraに入社する以前は、IT産業、学術、マーケティング分野でさまざまな職務を担当。
Sofia Strömmer, PhDは、Ouraの行動科学者です。フィンランド出身。フィンランドに帰国してOuraに入社する前は、16年間イギリスに拠点を置いていました。心理学者の資格を持っており、エクササイズビヘイビアの動機決定要因に注目した研究で心理学の博士号を取得。健康に関わる行動の変化による動機付けの解釈と、健康に関わる行動への動機がどのように生まれ、維持されるかという分野を専門としています。Ouraに入社する前は、サウサンプトン大学の医学研究評議会に研究員として勤務しました。