- 月経のある人に起こるホルモンの変動は、エネルギーレベルや気分に影響を与えることがあります。
- ホルモンの変化の影響を受けやすい方は、ワークアウトのルーティンを調整してみることをお勧めします。
- 先行研究によると、卵胞期は高強度の運動に最適な時期で、黄体期と月経期は運動量を減らし、軽度の運動をするのに適した時期とされています。
月経周期のある人は、ひと月を通して、エネルギーレベル、気分、モチベーションが自然に変化することがあります。このような自然な変化は、運動パフォーマンスだけでなく、運動に対する意欲にも影響を与えます。幸いなことに、少しの知識とOura Ringのようなツールがあれば、月経周期に合わせてワークアウトを調整できるようになります。
Ouraメンバーは生体情報データにアクセスして、毎日の習慣やルーティンに関する情報を得ることができます。この情報を基に、体のニーズに合わせてワークアウトを調整できます。具体的には、Ouraアプリの生理周期インサイト機能を使用すると、生理を正確に予測し、今が月経周期のどのフェーズにあるかを把握できます。
このパーソナライズされた情報によって、ひと月を通して体の状態を把握できるため、それを基に体のニーズや要望に合わせてトレーニングを調整できます。
周期フェーズとは?
月経周期は大きく、2つのフェーズに分けられます。
- 卵胞期(月経と排卵を含む):1日目から14日目。このフェーズは生理から始まります。
- 黄体期:15から28日目。このフェーズは排卵後に始まります。
各フェーズの長さは、人によって異なります。実際、月経周期が28日であるという考えは誤解であることが明らかになっており、Ouraのデータによって証明されています。
詳しく見る:排卵は14日後に起こるというのは本当?
月経周期に関連するホルモン
月経周期には、プロゲステロン、エストロゲン、黄体形成ホルモン(LH)という主に3つのホルモンが関わっています。これらのホルモンのレベルは、月経周期のフェーズに応じて変動します。
卵胞期には、エストロゲン、プロゲステロン、LHは低いレベルから始まり、排卵まで上昇を続けます。LHが急上昇すると、排卵を引き起こします。
黄体期は排卵後に始まります。黄体期の半ばになると、プロゲステロンとエストロゲンが急上昇します。プロゲステロンの分泌が増えることで子宮内膜が厚くなり、子宮の収縮が抑制されます。
やがて、プロゲステロンとエストロゲンが低下し始め、子宮内膜の上層部がはがれ落ち、生理として排出され、新しい周期が始まります。
生理が来ると、プロゲステロンとエストロゲンのレベルは最低に達します。
詳しく見る:月経周期が体全体に与える影響
ホルモンの変動と行動の変化
ホルモンは体内の化学伝達物質であり、代謝、妊娠の可能性、そして睡眠の質に至るまで、体内のあらゆる機能に影響を与えます。ホルモンには気分、行動、エネルギーレベルを変化させる力がありますが、特に急激に変化している時はその力が強まります。
月経周期の特定の時期に、気分や体調の変化に気づくことがあるのは、そのためです。これは、ごく普通の現象です。このような気分や行動の変化は、月経周期のある人の90%に見られ、PMSと呼ばれています。
PMSとは月経前症候群のことで、疲労、食欲増進、気分の浮き沈み、胸の張り、むくみ、お腹の張りなどを含む一連の症状を指します。その一部は、ホルモンレベルの変化によって起こります。
生理が始まると、プロゲステロンとエストロゲンのレベルが低下するため、疲労感や無気力を感じ、運動するための体力やモチベーションに影響を与えます。
これにはいくつかの理由があります。まず、エストロゲンは同化ホルモンです。同化ホルモンは「体を作る」ホルモンであり、体力とモチベーションを高め、ワークアウト後の回復を促し、代謝率を高めます。
2016年、スウェーデンのウメオ大学は59人の女性を対象に、ホルモンが運動能力に与える影響を調査しました。その結果、エストロゲンのレベルが最も高くなる排卵期の前後に、参加者の筋力や瞬発力が向上することが分かりました。
エストロゲンのレベルは、神経伝達物質の生成にも影響を与えます。エストロゲンのレベルが低いと、セロトニンやドーパミンなどの「幸せホルモン」の生成が妨げられます。エストロゲンのレベルが低下する生理中や排卵後に、気分が落ち込むことがあるのはそのためです。
プロゲステロンは、運動皮質の機能を低下させ、異化作用(組織の分解)を促進します。プロゲステロンが最高レベルに達すると、反応時間が遅くなり、筋活動のレベルが低下し、ワークアウト後の筋肉のタンパク質合成率が低下することがあります。また、食欲も刺激するため、生理の直前に空腹感が強くなる人が多くいるのはそのためです。
周期に合わせて運動する上で気を付けること
もちろん、ホルモン以外にも、睡眠、ストレスレベル、現在のフィットネスレベルなど、運動のパフォーマンスやモチベーションに影響を与える要因はたくさんあります。そのため、月経周期があるすべての人にとって、周期に応じてワークアウトを調整することが有益になるとは限りません。
「ワークアウトをどのように月経周期に合わせるかは、人それぞれです」と、産婦人科専門医でOuraの医療顧問を務めるChristine Noa Sterling医師は述べます。「ある人にとって周期の特定のフェーズが心地よく、正しいと感じられても、別の人が同じように感じるわけではありません。自分に合っていれば、それはいいことですが、必ずしもそうであるべきということはありません。」
研究は現在も続いており、新しい知見が次々と出てきています。興味深い暫定的な発見はいくつかあったものの、結果に影響する別の要素が多くあるため、ワークアウトを月経周期に合わせることについて客観的な結論を出すのは困難です。
2020年にSports Medicine誌に掲載されたメタ分析では、51の研究を用いて、月経周期のフェーズが運動パフォーマンスに影響を与えるかどうかを検証しました。この分析によると、月経中の運動パフォーマンスは「ごくわずかに低下」し、他の研究とは対照的に、黄体期(PMSが通常現れる時期)に大きな変化は見られなかったことが示されました。それでも研究者らは、「運動に対する各個人の反応に基づいて、パーソナライズされたアプローチを取る必要がある」と結論付けています。
いずれにせよ、月経周期に合わせたワークアウトは、特にPMSやPMDD(月経前不快気分障害)の経験がある方が、症状を改善したい場合に役立つ可能性があります。しかし、生理周期を通して比較的安定していると感じるのであれば、ワークアウトを減らすべき科学的な理由はありません。体の声に耳を傾けることのほうが、より効果的です。
月経周期に合わせたトレーニング
卵胞期(排卵を含む)
卵胞期の始め、ホルモンは最低値にあります。リラックスした気分になり、だるさを感じるかもしれません。5、6日目ごろになると、エストロゲンのレベルが上昇し始め、活力がみなぎってくるため、高強度のワークアウトを行うのに最適なタイミングとなります。
2014年に発表された研究では、20人の女性を対象に、卵胞期をベースとした筋力トレーニングと黄体期をベースとしたトレーニングを比較し、筋力への影響を調査しました。その結果、卵胞期には、筋肉量と強さが大幅に向上することが明らかになりましました。
このことから、研究者らは、卵胞期(排卵期を含む)は月経周期の中で、次のような高強度の筋力トレーニングに集中するのに最適な時期であると結論付けています。
- 高強度インターバルトレーニング(HIIT)
- 筋力トレーニング(回数や重さを増やすには、最適なタイミングです)
- サーキットトレーニング
月経周期のほぼ中間点である排卵期は、ワークアウトの負荷と強度を上げるのに最適な時期です。このベストなタイミングで、トレーニングに力を入れましょう。
黄体期
排卵後、月経までの間、エストロゲンのレベルは低くなります。これに伴い、エネルギーレベルやモチベーションの低下を感じるかもしれません。また、プロゲステロンのレベルが高いと、空腹を感じ、持久力が低下する可能性があります。通常、この時期にPMSの症状が現れます。運動への意欲が低下し、体がペースを落とすようサインを出しているかもしれません。
黄体期には、プロゲステロンの増加により、基礎体温、安静時心拍数、呼吸数が上昇します。Oura Ringは、これらの指標と生理周期を通して体表温の変化を追跡し、あなたの体がどのフェーズにあるか、生理がいつ始まるかを予測します。
黄体期には心血管への負担が高まるため、次のような低強度のワークアウトを行うのが最適です。
- 軽度から中程度の有酸素運動の有酸素運動
- ヨガ
- ピラティス
- ストレッチ
- 体温がすでに上昇している状態での激しい運動は、体への負担となるため避けましょう。
月経期
月経期は、生理が来る時期にあたります。PMSの症状を伴う場合があるため、体調に合わせて運動を選びましょう。人によっては、生理中の運動がけいれんを緩和したり、気分の落ち込みを和らげるのに役立つ場合もあります。
2013年の研究では、生理中の女性参加者グループに1週間に3回、有酸素運動を行ってもらい、PMSの重症度を評価しました。その結果、軽度から中程度の有酸素運動は、PMSとそれに伴う症状を軽減させることが分かりました。
月経期に体を動かすことが大きな効果をもたらすことを示す、さらなる証拠があります。ここでは、生理中に運動することが役立つ3つの理由をご紹介します。
- 気分を高揚させる神経伝達物質の増加:運動すると、エンドルフィン、セロトニン、ドーパミンなど気分を高揚させる神経伝達物質が放出されます。エストロゲンのレベルが低下すると、これらの神経伝達物質も低下しますが、運動でそれを補うことができます。
- 血流の増加:生理中に頭がぼんやりすることがありますか?これには運動が助けになります。体を動かすと脳への血流が増えてぼんやり感が解消され、思考がよりクリアになります。
- ストレスや不安の軽減:ある研究よると、運動はPMSの身体的および心理的な症状を軽減し、ストレスや不安を和らげるのに役立つことが明らかになりました。ただし、この研究では、参加者に有酸素運動を行うよう指示したため、HIITでは同じ効果が得られない可能性があることに注意する必要があります。有酸素運動やヨガなどの軽い運動は、ストレスや不安などPMSの症状を緩和するのに最も効果的であることが研究で明らかになっています。
体の声を聴き、データを活用しましょう
月経周期のどのフェーズにあっても、運動する気が起きない場合は、体の声に耳を傾けることが重要です。無理をすると、その日の全般的なコンディションや、長期的な体の調節機能や回復能力に影響を与える可能性があります。
Ouraのデータは、トレーニングにおける判断をする上で役立ちます。例えば、痛みを伴うけいれんなどで睡眠が妨げられた場合、睡眠スコアとコンディションスコアが低下するため、回復を優先すべき時であることが判断できるでしょう。
Ouraの生理周期インサイトを利用すると、生理中や生理以外の時期だけでなく、妊娠中や更年期など、女性が経験するさまざまな時期に応じて、運動、食事、睡眠を体のニーズに合わせて調整し、より良いコンディションを維持することができます。
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